ある日8

ある日。

川岸でボート大会を見た。

水が流れているところから100メートルほど離れたところに堤防が築かれており、その広場のところに屋根付きの観覧席が設営されている。この観覧席前がボート競争のゴールである。庶民はその周辺に隙間なく座ったり立ったりして、はるか遠くに見える川面を凝視している。食べたり飲んだりするための屋台や棒手振りもたくさん出ている。

朝から楽しみに出かけてみたが、3レースほどみたらもうすっかり退屈してしまった。その理由は、あまりにもボートが遠すぎて、興奮は伝わって来ないし、共感もできないからだった。一所懸命にオールを動かす人の顔もよくわからず、不自然な体勢でじっととおくの川面を見ている時間のほうが長いため、余計に早々に疲れてしまったのだろう。あっさりと帰宅することを決めて、ぶらぶら歩きつつ、祭りの喧騒に包まれている公園通りを逆行した。そもそも、どこのチームが今、対戦中なのか、それすらもよくわからない不思議なゲームであった。見に来ているのは暇なひとだけだよという説明は正しかったようだった。