ある日9

ある日。 朝から雨が降った。昼もまだ降っていた。夕方になっても、雨は上がる気配になく、夜になってもずっと降り続けていた。 次の朝、まるで冬のようにしみじみと寒かったので、いつもよりも早く目を覚ました。そしてベランダに出て、東の空を見た。明け…

ある日8

ある日。 川岸でボート大会を見た。 水が流れているところから100メートルほど離れたところに堤防が築かれており、その広場のところに屋根付きの観覧席が設営されている。この観覧席前がボート競争のゴールである。庶民はその周辺に隙間なく座ったり立ったり…

ある日7

ある日。 明け方に、遠くの寺院から低く、銅鑼を叩く音が聞こえてきた。夜半に降りはじめた雨の音の一つ一つを確かめるように聞いていたときのことだった。いつもならもう聞こえてくる鳥の声はない。起きているのかまだ寝ているのかわからない曖昧な感覚の中…

ある日6

ある日。 古い民家を利用した自家焙煎のコーヒー店へ夕涼みに行った。天井が高く、煤けた天井の梁、茶色い木の窓枠、裏庭に無造作に並べられたコーヒーテーブルと椅子。音楽のない空間。店の人もほとんど無言。客のほとんどは一人で来る。みな静かにコーヒー…

ある日5

ある日。 公園沿いにあるパン屋では、前日(ということになっている)、売れ残ったデニッシュや甘いパン類を5つほど袋詰にしたものをレジ脇のカゴに入れて売っている。もともとあまりおいしくないパン屋ではあるが、どの個体も大きさが他のパン屋よりも見た…

ある日4

ある日。 朝から、思わず顔が笑ってしまうような完璧な晴れの日。四時半から洗濯機を回し、洗濯物干し場に立つと、東の空の暗い暗い紺色になんとも言えないようなオレンジ色が少しずつ染め上げて行くような朝だった。エリック・ロメールの映画のように。 久…

ある日3

ある日。 朝、書類を持って来る予定だった学生が来ない。連絡をすると、12時に授業が終わるから昼食を食べてから来るという。約束は午前9時だった。そのことに対する説明も言い訳も一切ない。挙句、昼に来てみれば、提出するはずの書類はまだ書いていない。…

ある日2

ある日。 いつものように出勤。今日は道が混んでいないと思ってずっと目をつむっていたら、いつのまにか途中で大渋滞となったようだ。車が全然、動いていない。時計はチクタクと進む。遅刻するかな、間に合うかなと思いながら沿道を眺めていると、確か先日ま…

ある日1

ある日。 午前3時起床。コーヒーを淹れて、仕事。4時過ぎ、洗濯機を回す。6時、子どものホットケーキを焼く。7時半、出勤。 今日はオフィスにはひとりだけなので、音楽を聞きながら、月末の書類などをまとめて作成。 通勤タクシーのドライバーは少し気が…